■エピローグ■
 

 朝から城は賑わい、華やかな衣装に身を包んだ女達がイソイソと動き回る。
 すっかり日が昇り切ったころ、天に向かって空抱が響き渡り、民は皆広場へと集まった。
 歓喜に沸き立つその中心は、銀の煌めく王と金に輝く王妃の姿。その両脇に側近を抱え、前竜王とオルレーヌの姿も見えた。
「セティー様だ」
「ジャスティス様もいらっしゃるぞ」
 口々にそんな声が聞こえる。
「竜王国万歳。竜王国に栄えあれ」
 誰かが叫び、それはいつしか一つの声となり谺する。
 彼等は以前の、安泰と平穏に栄えた国を見つめていた。
 けして過去ではなく、これからは確かな未来として。


「セティー、二度と勝手は許さないよ」
 悪戯めいた瞳でライウェンが語った。
「竜王命令ですか?」
「そう、これは命令」
「では私からはお願いが」
「セティーが?」
「そう、私が直々にお鍛え申し上げたその剣技武道の数々、すべて身を守るためのもの。 けしてお飾りなどではございません。この次からはどうぞ少しはご自分でも身を守って頂きたいと」
 二人とも目が笑っている。
「承知した」
 セティーが右手を高らかに掲げ朗々響く声で自らの帰還を宣言すると、国民は再び沸き立ち、竜王に対する万歳が沸き起こる。


 今ここに、再び新たなる竜王国の歴史が始まった。
 美しく果敢な王族を筆頭に、様々な思惑を抱きつつ、彼等は平和を築くために立つ。
 次の時代の竜王に、この国を委ねるその日まで……。


 長く続いた旅は、今、終止符を迎えた。
 明日から始まる日々は、忙しく充実した日々。
 城は、かつての賑わいを取り戻し、謁見に訪れる民の数も増えた。
 きっとこれでよかったのだ。
 きっと……。


 人形のような金の瞳が、一瞬微笑んだかに見えた午後。
 彼女はひとり、何を見つめて過ごしているのか──。    

            Fin
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