あなたと出逢うため 
エピローグ



 その後、アシフェルの姿は消え東の片牙も廃墟と化した。
 呪われた聖地と呼ばれた大地のどこかにルヴェリーゼが眠っているという噂も風に乗りいつしか誰も語らなくなった。
 ラリアディスの姿もデューリシオスの姿も、今では誰も見たものがない。当分聖地は聖地のまま、人の手は加わらぬだろう。
 メイジスラジアの帝国はラリアディスの双子の妹姉妹がヌリエーグロス始まって以来初の二人の女帝として国を治めたという。
 デューリシオスもまた、侯爵家の嫡男ではあったが、その地位を次男のカリザが立派に果たしている。
 時折聖地から風に運ばれ物悲しい『恋歌』の旋律が微かに聞こえ、良く晴れた光の恵み豊かな日には『黒い瞳』の曲が、どこからともなく聞こえるという。
 誰かが言った。
 
ケセナの王女が泣く声──と。                       
 
燃え尽きた筈のライダの国で、二人の寄り添う肖像画だけが、訪れる事のなかった婚礼の日を待ち侘びている。



                        {あなたと出逢うため} 〜Fin〜
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