何かに吸い寄せられるように、目が覚めた。
大きな窓が目の前に広がっている。淡くぼやけた空が見える。 黄色が混ざった灰色。もっと白が強いかもしれない。 そう、ちょうど雨が止みそうな、降り出しそうな空模様。 大きな大きな窓に、広い高い空。 青、否、瑠璃だ。 その色は輝く瑠璃。 巨大な生き物が空を、窓を悠然と横切っていく。 輝く瑠璃は鱗だった。 龍だ。 龍が飛翔しているのだと理解するまで、私は瑠璃の色に目を奪われていた。 それほどまでに美しい青。 それが龍だと理解した今、窓から身を乗り出し、その姿をもっと求めた。 背の鱗は瑠璃。 腹は淡い檸檬色が艶を放つ。 靡く無数の髭はまるで金色の光。 私は龍を見た。 きっと、人生で最後の目撃だろう。 人生で最初の目撃は時を超えて伝え聞いた龍を想う。 昔の誰かもこうして龍を見たのだ。 私も龍を見たのだ。 どこから来たのか、どこへ行くか、そんなつまらない事は考えなかった。 青い龍、もう二度と出会えない。 だからこの目に、この瞼に、心に焼き付けておこう。 龍が東の空へ過ぎるのを見ていた。 太陽が、霞の中に生まれ出た、その最中へ消えていく姿を私は見ていたのだ。 龍はそこに、確かに存在した。 私は龍を見た。 青く輝く鱗は美しい。 これ以上の風景が、この世に存在するとは思えない。 私は龍を見た。 |
*** ひかるあしあと ***
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