◇ プロローグ ◇

鏡の如く磨き上げられた黒く艶やかな城壁は、厳つく聳える塔の連なりを点に向け、
凛として街を見下ろしていた。
城下に広がる街の様子は、漆黒に濡れる城を中心に、裾野を広げるかのように
ほぼ正確な十二角形をかたどっている。
城を正面に据える十二の門が街をぐるりと囲い、どれも正確に城を捉えていた。
その門の一つ一つには、城に暮らす十二人の賢者の名が記され、
またその数においては、かつて世界を創造した絶対神が姿を変えたという、
十二人の老人をも意味しているのだという。
即ち、どの方角へ向かう者にも神の加護を約束し、
またどの方角から訪れた者に対しても、神の祝福が与えられる。
十二の門が護る中心に住む者は、神が最初に創りたもうた物の半分。
つまり、世界の半分を占める闇。
その闇を統括するために産み出された物こそ、
城の主にして、闇の王の名を掲げる者。
  混沌の闇より創造されし、闇の申し子。
彼の者の統べる場所。ゆえに、この街は、


闇の王城都市 カリュッセ と、呼ばれる。




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